人手不足によるサービス不十分や、激務による職員の健康被害といった介護業界の抱える課題は、一長一短には解決できないものだ。
人員配置基準を緩和するとなれば、職員への負担の増加が大きな課題となりえるだろう。
人員配置基準の緩和は、不足するマンパワーを技術で補うことが前提となっている。自力で動けない人を運ぶためにロボットを用いたり、介護を要する状況になると職員へ知らせが届くセンサーを用いたりして、職員の肉体的な負担を減らそうという試みだ。
しかし新技術を利用するためには、それを扱うだけの知識、技術が必要となる。また、介護を受ける側へ、機械の利用を納得してもらう仕組みづくりも必要になってくる。学習や交渉など、新たに生じる業務負担をいかに軽減するかが課題だろう。
介護する側とされる側とのコミュニケーションの希薄化も問題点になる。
介護施設への人員配置を減らせば、当然、職員ひとりひとりが受け持つ人数は増える。そうなれば、実際の介護活動へ割く時間を減らさざるを得なくなるのは一目瞭然だ。介護を受ける側の抱える悩みや、不安を打ち明けてもらえる会話の時間も減ってしまうことにつながる。
一人で容易に生活できない人でも、誰かのサポートで生きていけること。そして生きる希望を持ってもらうことが、介護する上で守るべき最低限の精神である。やはり人と人のふれあいが第一であるため、機械があたえる単に生き永らえさせられている印象をいかに払拭するかも課題となるだろう。